法政大学サステイナビリティ研究教育機構の閉鎖にあたって

  2009年8月、法政大学は文部科学省からの大型助成金を獲得して、サステイナビリティ研究教育機構(略称、サス研)を設立した。サス研のような性格を有する組織の設置は、法政大学の長い歴史においても前例が無く、大学院レベルの研究教育の改革に、画期的な意義を有するものであった。サス研はその出発点において、1.総合大学の特徴を生かした文理協働、2.大学院レベルの教育と研究活動の融合による若手研究者の育成、3.国際的な情報発信を、課題として掲げていた。  

  このような課題に取り組むサス研の活動は、大きくは、研究プロジェクトと事業プロジェクトに分けられるが、実際の運営においては、両者が融合するかたちで、さまざまな研究活動を展開してきた。それらの主な具体的成果をあげると、日本で初めての「環境アーカイブズ」の形成、32回にわたる「サス研フォーラム」の連続的開催、「サス研ブックス」翻訳書シリーズの四冊の企画刊行、二回にわたる国際シンポジウムの開催(2011年、2012年)、東日本大震災に対する復興支援のための震災タスクフォースの諸活動、その一環としての陸前高田市の議会文書の修復、これらの活動に立脚した三冊の研究書の公刊、『原子力総合年表』の公刊準備、世界で初めての試みである英文の『世界環境年表』(A World Environmental Chronology)の公刊準備、国連大学Pro.SPER.Netの企画であるサマースクールの運営担当(2011年夏)、国際有機農業映画祭(2012年)など、きわめて多彩かつ積極的に各種の取り組みを行ってきた。  

  また、若手研究者の育成という点で見るならば、2009年度には、本学大学院生約70名に支援する体制を作り、2010-2012年度は、全国公募と学内公募を組み合わせて、各年度に40名前後の若手研究者・大学院生に、ポスドク研究員やリサーチ・アシスタントのポストを提供して、各種の事業プロジェクトや共同研究活動を担ってもらうと共に、個人研究を深める時間的、経済的資源の提供に配慮した。サス研でそのような機会を得た若手研究者・院生から、この間、10本の博士論文が提出され、全国の諸大学に21人が専任教員あるいは特任教員として着任するという成果があった。このような成果は、2009年頃より取り組みが積極化した本学の大学院改革と連動したものである。すなわち、博士論文出版助成、大学院チューター制度、諸外国語論文翻訳支援、海外学会発表等渡航補助などの諸事業の開始・実施とサス研の活動とは、相乗効果を発揮したと言えよう。

  設立の経緯からして、サス研の長期的存続は、新たな外部大型資金の獲得にかかっていた。けれども、私立大学戦略的基盤形成支援事業(2010,2011,2012年度)と、科学研究費「新学術領域」(2010年度)への申請を繰り返し行ったが、残念ながら採択に至らず、本学理事会の判断として、2012年度末をもってサス研を閉鎖するとの決定がなされるに至った。  

  しかし、大学院レベルでの研究・教育活動の発展のためには、サス研の取り組んできた諸活動、諸成果、諸企画を、今後も継承させていくことが望ましい。そこで、これからはサス研の担ってきたさまざまな諸機能を分散的に担うような複数の拠点を本学内に設置し、それぞれの活動の自律的展開と相互連携を図っていくという展望を提示したい。

  事業プロジェクトの柱であり広範な社会的協力者も得た環境アーカイブズについては、引き続き、本学内の大原社会問題研究所に継承される。研究活動については、その多くの部分が、既設の研究所である「エコ地域デザイン研究所」(所長:陣内秀信)と新設の特定課題研究所である「サステイナビリティ研究所」(所長:舩橋晴俊)や「グローバルサステイナビリティ研究所」(所長:河村哲二)に、また、理系の各研究室に継承される。また、それと連動しつつ、未完の事業プロジェクトや震災タスクフォースの各チームの活動も、これらの研究所や本学のさまざまな研究室、研究科に継承されていくであろう。

  また、サス研の閉鎖に伴い本ホームページの更新は2013年3月末日をもって終了するが、サス研のこれまでの研究成果・活動成果は、本ホームページで引き続き閲覧可能であり、その意味での情報発信は継続される。

  これまでサス研にあって、サス研の活動を支えていただいたすべてのサス研構成員(教員、若手研究者、職員)の方々と、サス研の協力者として貢献いただいた本学内外のさまざまな方々(研究者、市民団体メンバーなど)、また助言の労をとっていただいたアドバイザリーボードの皆様に、深甚なる感謝を捧げたい。サス研に関係した方々が、サス研での経験を今後さまざまに生かしていただければ、まことに幸いである。

2013年3月31日

舩橋 晴俊 (サステイナビリティ研究教育機構 機構長)